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名古屋地方裁判所 平成3年(行ウ)44号 判決 1992年10月09日

原告

近藤平一

右訴訟代理人弁護士

渥美雅康

森山文昭

松本篤周

加藤美代

被告

長久手町固定資産評価審査委員会

右代表者委員会

浅井光利

右訴訟代理人弁護士

那須國宏

渡辺直樹

右訴訟復代理人弁護士

白石芳澄

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

別紙物件目録一記載の土地に対する平成三年度の固定資産課税台帳登録価格につき、被告が平成三年七月一八日付けでした原告の審査の申出を棄却する旨の決定を取消す。

第二事案の概要

本件は、原告所有の土地の固定資産価格は過大に評価された違法があるとし、それについての審査申出を棄却した被告の決定の取消を求めた事案である。

一争いない事実等

1  原告は、別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有しているが、長久手町長は、地方税法(以下単に「法」という。)四一〇条に基づき平成三年度固定資産税登録価格(以下「本件登録価格」という。)を一億〇五四四万九四二四円と決定し、法四一一条の規定により本件登録価格を固定資産課税台帳に登録し、同年四月一日から同月二〇日までの間、関係者の縦覧に供した(縦覧期間につき弁論の全趣旨)。

2  原告は、同月二四日、本件登録価格について、被告に審査の申出(以下「本件審査申出」という。)をしたが、被告は、平成三年七月一八日付けで本件審査申出を棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)をし、本件決定は、そのころ原告に送達された。

3  固定資産税における固定資産の評価方法は概略以下のとおりである。すなわち、固定資産税における固定資産の評価は、法四〇三条一項により固定資産評価基準(以下「評価基準」という。)に従って決定しなければならず、それによれば、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって、それを形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によって評価される。そして、後者の評価方法は、(1)状況類似地区の区分、(2)状況類似地区ごとの標準宅地の選定、(3)標準宅地の適正な時価に基づく評点数の付設、(4)標準宅地の評点数に比準して状況類似地区内の各筆の宅地の評点数の付設、(5)各筆の宅地の評価額の算出の手順で行なわれる。

4  本件土地の所在する地域が主として市街地的形態を形成する地域ではないので、長久手町長は、「その他の宅地評価法」によって、概略以下のとおりの方法で評価した(<書証番号略>、証人鎌倉、弁論の全趣旨)。

(一) 状況類似地区の区分

状況類似地区は、宅地の沿接する道路の状況、公共の施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他宅地の利用上の便等を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる宅地の所在する地区ごとに区分するものであるが、この土地区分は、利用状況による地区区分、利用上の便による地区区分の順になされる。

利用状況による地区区分については、家屋、専用住宅、商店の連たん度によって区分がされるところ、長久手町長は、長久手町大字長湫字丁子田(以下「字丁子田」という。)を「村落地区」と認定し、字単位をとり字丁子田を一状況類似地区とした。

利用上の便による地区区分については、①道路条件(道路の系統、性質、舗装の程度、勾配、幅員、交通量等道路交通上の利用上の便否)、②接近条件(役場、郵便局、学校、鉄道の駅、バス等停車場及び商店街等の交通又は公共施設等が接近していることによる利用上の便否)、③宅地条件(宅地の高低、乾湿、日照、降水量、都市計画法による用途地域、建築基準法による規制等宅地自体の利用上の便否)により、前記地区区分を更に区分するかどうかを検討するところ、長久手町長は、右の諸条件を検討した結果、字丁子田地区を更に区分する必要がないものとして、同地区を一状況類似地区とした。

なお、長久手町長は、これらの作業を株式会社総合鑑定調査(以下「訴外会社」という。)に依頼し、その結果に基づき検討して決定した。

(二) 標準宅地の選定

標準宅地は、状況類似地区ごとに、道路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等からみて、標準的なものと認められるものを選定すべきものであるところ、長久手町長は、訴外会社に依頼し、その結果に基づき検討して長久手町大字長湫字丁子田一五―一一六を標準宅地(以下「本件標準宅地」という。)として選定した。

(三) 標準宅地の適正な時価に基づく評点数の付設

長久手町長は、訴外会社に平成元年七月一日現在の標準地正常価格の鑑定を依頼し、同社はMIA固定資産評価システムにより、平成二年三月二六日付け報告書によって本件標準宅地の正常価格を一平方メートル当たり二〇万六〇〇〇円である旨の鑑定をした。

長久手町長は、右鑑定価格を基にしつつこれを大幅に抑えて、本件標準宅地の評点を一平方メートル当たり二万六八〇〇点(評点一点あたり価額一円)とした。

(四) 本件土地の評点数の付設

本件土地を比準表により本件標準宅地に比準した結果、本件標準宅地の評点に二〇パーセントの減額補正をして、本件土地の評点を一平方メートル当たり二万一四四〇点とし、これに地積4918.35平方メートルを乗じた一億〇五四四万九四二四点を本件土地の評点とした。

(五) 本件土地の評価額の算出

本件土地の評点に、評点一点当たりの価格一円を乗じた一億〇五四四万九四二四円を本件土地の評価額とした。

二争点に関する当事者の主張

1  状況類似地区の区分及び標準宅地の選定の合理性の有無

(一) 原告

本件で選定された標準宅地は宅地造成により区画や道路等が整備されている「ふじみケ丘団地」内の宅地であるのに対し、本件土地は、傾斜地に接し未造成部分の多い宅地である。

ところで、本件「字丁子田」地区は「村落地区」とされているが、現実は農村や山村といったものではなく、ふじみケ丘団地等の住宅地として造成され、家が建ち並んでいる地域と、山林や田が広がっている地域からなっている。造成の有無や宅地の高低等の宅地条件が異なれば宅地の価格事情は大幅に異なるのであるから、本件地区を「村落地区」とするのであれば、標準宅地の選定は村落地区として標準的な宅地を選定すべきであり、そのような標準宅地を選定することなく、本件土地が専用住宅が相当連たんしている住宅地区であるふじみケ丘団地内にある標準宅地と同一の状況類似地区に含められることは不合理である。

(二) 被告

(1) 利用状況による地区区分については、本件土地の存する地区は市街化調整区域であり、長久手町ではこのような区域を農家等の集落である「村落地区」としていること、自治省の指導では基本的に一集落一状況類似地区と考えて差し支えないとされていることから、本件では字単位をとって字丁子田を一状況類似地区とした。

また、利用上の便による地区区分については、もともと「その他の宅地評価法」適用地区にあっては、「市街地宅地評価法」適用地区に比べて宅地の立地条件と価格事情の関連は単純であり、一般に価格差も少なく一地区の規模が大きくなるものであるところ、本件字丁子田地区は「村落地区」であって「その他の宅地評価法」適用地区であり、再区分の必要を認めなかったことから、結局同地区を一状況類似地区とした。

(2) 標準宅地の選定

本件土地は、道路条件において都市計画道路(高針御嶽線)に接しており、接近条件において、バス停、地下鉄本郷駅、ショッピングセンター(栄和ストア)に本件標準宅地より近く、いずれの条件に関しても本件標準宅地に勝るとも劣らず、また、宅地条件については、「村落地区」では更にこれを区分する程の大差はない。

よって、本件における状況類似地区の区分、標準宅地の選定は適法である。

2  評価方法の適否

(一) 原告

被告は、本件土地の形状等による比準割合やその他の比準割合について、個別に検討することなく、漠然と結論として0.8との比準割合を定めているが、これでは、評価基準が「宅地の比準表」を定めた意味がないのみならず、評価者の恣意的判断が混在してもそれをチェックすることができないのであって、適正な評価方法といえない。

(二) 被告

本件土地の評価方法は適正である。

3  奥行及び形状による比準割合の合理性の有無

(一) 原告

(1) 奥行に関する比準割合の不合理

評価基準は比準宅地の奥行距離と標準宅地の奥行距離の相違に応じて「奥行による比準割合」を定めているが、これによれば、「専用住宅が相当連たんしている」状況類似地区においては、標準宅地の「奥行が18.19メートル以内」に対して比準宅地の「奥行が54.55メートルをこえる場合」の比準割合は0.8とされている。

本件では、状況類似地区は「専用住宅が相当連たんしている」に、選定された標準宅地は「奥行が18.19メートル以内」にそれぞれ該当するものと思われ、また、本件土地は「奥行が54.55メートルをこえる場合」であるから、奥行による比準割合0.8が適用されるべきであるのに、本件土地の比準割合を0.9とした評価は誤っている。

また、本件土地は不整形地であり、「形状等による比準割合」がさらに適用されなければならないのであるから、奥行及び形状による比準割合だけで、被告が判定した0.8を下回る比準割合が適用されなければならなかったはずである。

(2) 宅地の高低・傾斜その他未造成による比準割合について

評価基準によれば、「宅地の評価表」に定める項目以外についても十分に地価の実情を調査し、実情に即した評価が行われるよう比準表を作成し適用しなければならないとされているところ、本件土地は東西方向にかなりの傾斜地であって、その高低差は一〇メートル以上に及んでいるのであるから、このことが本件土地の利用に当たって造成等の必要により「地価」の実情に影響を与えることは明らかである。

また、本件土地は未造成地であるから、これを宅地造成するためには、長久手町の宅地開発等に関する指導要綱に基づく負担を余儀なくされ、それらのコスト負担がその利用方法を大きく制約する要因となるのであるから、この点についても固定資産評価に当たって考慮される必要がある。

これらの点を無視した本件固定資産評価は不当である。

(二) 被告

(1) 奥行による比準割合の合理性

本件土地は、奥行が36.37メートルを超えていたため、家屋の連たん度が低いときの比準割合0.9を適用して一〇パーセントの減額補正をした。「奥行」に関する原告の主張は、本件土地の属する状況類似地区を「専用住宅が相当連たんしている」地区であることを前提にしているが、本件状況類似地区は「村落地区」であって「家屋の連たん度が低いとき」にあたり、比準割合は0.9が正しい。

(2) 形状に関する比準割合の合理性

「形状」に関して、評価基準の「その他の宅地評価法」の比準表では不整形地についての比準割合の上限は三〇パーセントとすることとされているところ、本件土地はやや不整形地であるが、土地の面積が大きいことから建物建築等通常考えられる利用上の制約はさほど大きいとは考えられない。そこで、形状に関しては、やや不整形地であることと宅地としての未造成部分もあることとを合わせて、奥行減額補正に加えて一〇パーセント程度の減額補正をするのが相当である。

(3) 宅地の高低・傾斜による補正について

宅地の高低及び傾斜に関する補正は、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」第三条に規定する「急傾斜地崩壊危険区域」の指定を受けた土地についてなされるものであり、本件土地は右指定を受けていないので補正をすることはできない。

また、本件土地に未造成部分があることに関しては、本件土地の形状が不整形地であることと併せ考慮して一〇パーセントの減額補正をしている。

4  都市計画道路予定地に対する比準割合の補正の要否

(一) 原告

本件土地約四九一八平方メートルのうち約一二〇〇平方メートル(別紙図面⑤の部分)は、都市計画道路予定地として道路の拡幅予定があり、長久手町の宅地開発等に関する指導要綱によれば、本件土地を宅地開発するに当たっては、都市計画道路予定地はこれを「空地とすること」が事実上義務付けられる扱いになっており、現時点では事実上建築することもできず、また、本件土地を第三者に譲渡しようとする場合には、都市計画道路予定地を除外した面積のみが価格算定の対象とされるのが実態である。

本件土地ではその約四分の一が右状態にあり、価格事情に特に著しい影響が認められる場合に当たるから減額補正を行わないのは著しく不当である。

(二) 被告

昭和五〇年一〇月一五日自治固第九八号東京都総務・主税局長、各道府県総務部長宛自治省税務局固定資産税課長通達(以下「昭和五〇年一〇月一五日自治固第九八号通達」という。)によれば、「都市計画施設の予定地に対する建築規制に基因してその価格が低下している宅地については、その価格事情に特に著しい影響が認められるときに限り、当該宅地の評価は当該宅地の総地積に対する都市計画施設の予定地に定められた部分の地積を考慮して定めた三割を限度とする補正率を適用してその価額を求めても差し支えない」とされている。本件土地の一部は都市計画道路予定地となっているが、賦課期日である平成三年一月一日時点(以下「本件時点」という。)では、都市計画法第五三条により、その区域内で建築物の建築をしようとする者は、建設省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならないこととされ、同法五四条によれば、右許可申請がなされたときは、当該建築が、(1)階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと、(2)主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であることの要件に該当し、かつ、容易に移転し、若しくは除去することのできるものであるときは、その許可をしなければならないとされている。

したがって、本件土地のうち都市計画道路予定地は、本件時点ではその利用が可能であり、かつ、用地買収にあたっては換地あるいは補償金が交付され、その補償金は、価格的にも譲渡所得税の優遇措置の点からも一般の売買より条件は優れており、また、計画実施後の本件土地は拡幅された道路に接する土地としてその価格が上昇することが予想されるため、本件時点では、本件土地はその価格が低下し、その価格事情に特に著しい影響が認められるとは考えられないので、本件土地の一部が都市計画道路予定地であることにつき減額補正をしなかったことは何ら不当ではない。

5  日照阻害に関する減額補正の要否

(一) 原告

本件土地に隣接した土地(別紙物件目録二記載の土地で別紙図面①の部分)に、本件時点で訴外リクルートコスモス株式会社が容積率四〇〇パーセント、地上二〇階建ての分譲マンションを建築予定であり、平成三年六月には建築確認を得ている。これにより、本件土地のうち別紙図面②の部分が終日影地となるため住宅建築としての利用が事実上不可能であり、また本件土地の原告居宅敷地部分である別紙図面③は午前中ほとんど日影になるので住宅地としての価値は減少している。右日照阻害を考慮しないのは不当である。

(二) 被告

昭和五〇年一〇月一五日自治固第九八号通達において、「日照阻害を受ける住宅地区の宅地については、日照阻害の原因となる中高層の建築物の高さ及び当該建築物による日影時間等を考慮して定めた二割を限度とする補正率を適用して、その価格を求めるものとする。」とし、住宅地区の宅地についてのみ補正率を定めている。

また、土地評価は評価時点における現況によってなされるところ、本件時点では、原告主張の如き分譲マンションは現存せず、現実の日照阻害は生じていない。

したがって、日照阻害による減額をなさなかったのはいずれの点からも何ら不当ではない。

6  相続税における評価との関係

(一) 原告

本件土地は、相続税における評価に際して路線価方式ではなく倍率方式がとられているが、路線価方式では変形地の場合に三〇パーセントの範囲で評価減がなされるのに対し、倍率方式ではこの変形地の評価減がなされないので、固定資産評価の際にこれを十分考慮して減額補正を行うべきであり、この意味において比準割合の適用及び補正についての評価庁の自由裁量の範囲の幅は極めて狭いものと解釈されるべきである。

しかるに、この点を考慮しなかった評価は不当である。

(二) 被告

固定資産税における評価は、その評価基準に従い、適正な価格を決定するものであり、それが相続税における宅地の評価にどのように影響するかを考慮して行われるものではなく、原告の主張は失当である。

第三争点に対する判断

地方税法は、固定資産税における固定資産価格につき「適正な時価」をいうものとし(法三四一条五号)、市町村長は固定資産の価格を決定するについて、自治大臣の定める評価基準(法三八八条)によらなければならないと定めている(法四〇三条一項)。右によれば、評価基準は、法の規定に従い固定資産の価格を算定する基準・方法を定めるべきものであって、固定資産の価格の決定が、評価基準によりその適正な運用のもとにされたものである限り、その決定は適法なものであるというべきである。したがって、本件土地価格の決定が適法であるか否かは、本件土地の評価が評価基準によりその適正な運用のもとにされているか、すなわち評価基準にのっとっているか否かにかかっているということができる。

一状況類似地区の区分及び標準宅地の選定の合理性について

証拠(<書証番号略>、証人鎌倉)によれば、①本件土地は幅員六メートルの町道に接しているのに対し、本件標準宅地は右町道より更に北に入った道路に面しているに過ぎないこと、②本件土地は本件標準宅地より、バス停、地下鉄駅、ショッピングセンターなどの公共施設等に近距離の位置にあること、③本件標準宅地は字丁子田地区内の住宅地として造成されたふじみケ丘団地の中にあり、本件土地は右団地からは外れていること、④右団地には未建築の部分がかなり残っていること、⑤右団地については区画整理事業が行われていないこと、⑥字丁子田地区全体が市街化調整区域に指定されていることなどの事情が認められるところ、状況類似地区の区分は、結局、価格事情の近似した地区に区分することを目的としているということができるのであるから、右認定の諸事情に照らせば、被告が字丁子田地区をおおむねその状況が類似しているとして同一の状況類似地区としたことは、相当であるというべきである。

そして、前記第二の一4(二)の事実によれば、標準宅地の選定も適法であると認められる。

二評価方法の適否について

1 評価基準の「その他の宅地評価法」においては、評価上価格に影響を及ぼす事項のうち重要なもののみを取り上げて比準割合を規定し、評価基準に特段の定めがない事項については、「宅地の状況に応じて必要があるときに『宅地の比準表』に所要の補正をして適用する」ものとしている。この「必要があるとき」とは、固定資産(土地)の評価が画一的な基準により大量の土地を評価するものであって、その性質上土地の価格に影響を及ぼす全ての事項を考慮に入れることは技術上不可能に近いものであり、しかも限られた日時のうちに限られた職員によってなされなければならないという課税技術上の制約を受けていることを考えると、その事項の価格への影響が大きく、評価の結果に著しい不均衡を生じる場合を意味するものであって、それ以外の場合には、評価基準に特段の定めのない事項を考慮しなかったとしても、その場合の評価は正当なものと解するのが相当である。

また、評価すべきものとされた事項について、その比準割合を数値的にいかなるものと評価するか、評価事項別に個別的に評価するか総合的に評価するかについては、評価基準は特段の定めをおかずこれを評価庁の裁量的判断に委ねているものと解されるのであって、右の評価庁の判断は、右の数値ないし評価方法が不合理であるなどの特段の事情がない限り、右裁量の範囲内のものと解するのが相当である。

2 原告は、本件土地の形状等による比準割合やその他の比準割合の評価方法につき個別に割合が検討されることなく漠然と結論的に定められており適正を欠くと主張するが、その数値ないし評価方法が不合理であることを窺わせる事実を認めるに足りる証拠はないので、その数値ないし評価方法は、裁量の範囲内にあって正当であるというべきである。

三1  奥行及び形状による比準割合の合理性

評価基準別表第4によれば、奥行による比準割合の数値は、該当する「状況類似地区の状況」ごとの「標準宅地の状況」欄に対応する「比準宅地の状況」欄の数値によるものとされ、右「状況類似地区の状況」の判断は、当然のことながら一の状況類似地区を一体として判断すべきものであるところ、証拠(<書証番号略>、証人鎌倉)によれば、本件標準宅地の存在するふじみケ丘団地内にも未建築部分がかなり残っているばかりか、字丁子田地区には南西部分の団地を除けば未だ山林がかなり存在している状況にあることが認められるので、字丁子田地区においては家屋の連たん度は低いものと認めるのが相当である。

したがって、右条件を前提として被告が奥行比準を0.9としたことは適法であり、専用住宅が相当連たんしていることを前提とした原告の主張は失当である。

次に、評価基準は、不整形地に関しては最高限三〇パーセントの減額補正をなしうるものと定めているところ、その理由は不整形地であれば土地の利用上の制約から価格に影響を及ぼすことが考慮されたものであると解されるが、証拠(<書証番号略>、証人鎌倉)によれば、本件土地の形状は、鋭角三角形の底辺部分半分が四角に切り取られたような形状であって不整形をなしているとは認められるものの、全体の面積は4918.35平方メートルと大きく、本件土地を更に区分することで整形地が得られるため、土地の利用上の制約はそれほど大きくないと考えられる。

したがって、本件土地が不整形地であることは、本件土地に未造成部分があることと併せて形状に関する減額補正を一〇パーセントとしたことによって適正に考慮されているものと認めるのが相当である。

2  宅地の高低・傾斜について

一般に「その他の宅地評価法」が適用される地域の宅地においては、画地条件の相違が価格に及ぼす影響は、「市街地宅地評価法」の適用される地域における宅地におけるそれに比して大きくないものと解され、その結果、評価基準に定められている比準表も「市街地宅地評価法」におけるそれに比べて極めて簡単なものになっている。

ところで、評価基準の「その他の宅地評価法」においては、「宅地の状況に応じ、必要があるときは、『宅地の比準表』について、所要の補正をして、これを適用する」と規定されているところ、宅地の高低・傾斜については、画地の条件の相違が価格に影響を及ぼす度合いが高いと認められる「市街地宅地評価法」においてさえ、「崖地等で、通常の用途に供することができないものと認定される部分を有する画地については、……『崖地補正率表』(附表8)を適用して求めた補正率によって、その評点数を補正するものとする。」とされ(別表第3画地計算法8の(3)袋地等の評点算出法)、「通常の用途に供することができない」ことが要件とされている。したがって、右規定が置かれていない「その他の宅地評価法」において、傾斜地に関し「宅地の状況により必要があると認めるとき」とは、少なくともこれを上回るものであることが予定されていると考えられるところ、本件土地の高低差が原告主張のとおりであるとしても、証拠(<書証番号略>、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地が「通常の用途に供することができない」ほどの「崖地」であるとは認められないから、補正をしなかったことに何らの違法も認められない。

また、未造成地の点からの減額補正については、証拠(証人鎌倉)によれば、不整形地の点と併せて考慮されていると考えられるから原告の主張は理由がない。

四都市計画道路予定地であることについて

前記二1で述べたように、評価基準に直接定めのない事項については、その事項の価格への影響が大きく、評価の結果に著しい不均衡を生じる場合に考慮すれば、その評価は正当なものと解されるところ、都市計画道路予定地となっているための建築制限による減額補正については「その他の宅地評価法」に直接の定めがないのであるから、その事項の価格への影響が大きく、評価の結果に著しい不均衡を生じる場合に考慮すれば足りると解される。

そして、都市計画道路予定地については、都市計画法五三条により、建築物を建築する場合には都道府県知事の許可が必要であるが、右の許可申請があった場合には、同法五四条により、階数が二以下で、かつ地階を有せず、主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であって、容易に移転し、若しくは除却することができるものであると認めるときは都道府県知事はこれを許可しなければならないものとされており、右の限度では、建築物の建築が可能であるし、土地が収用される場合には、同法六九条、土地収用法に従って金銭の支払いないし替地の提供による補償が受けられるのであるから、本件土地の一部が都市計画道路予定地とされていることは、その価格事情への影響が著しく、評価の結果に著しい不均衡を生じる場合に当たるということはできず、したがって、右の点を減額補正の対象としなかったことも何ら違法でないというべきである。

原告は、長久手町の宅地開発等に関する指導要綱の運用では、本件土地を宅地開発する際には、都市計画道路予定地はこれを「空地とすること」が事実上義務付けられていた旨主張するところ、事前協議結果通知書(<書証番号略>)にはその旨記載があるが、証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、右通知書は原告が建設を予定していた長久手老人センター(仮称)に関するものであり、右センターは鉄筋コンクリート造二〇階建ての恒久的な施設とすることが予定されていたことが認められるのであるから、右通知書の記載をもって原告の主張の裏付けとすることはできず、原告の右主張は採用することができない。

五日照阻害の点について

日照阻害による減額補正についても「その他の宅地評価法」には直接の定めがなく、その事項の価格への影響が大きく、評価の結果著しい不均衡を生じる場合に限って考慮すれば足りると解されるところ、証拠(<書証番号略>、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は本件土地に隣接する土地を訴外株式会社リクルートコスモスに売却し、同社は、右土地に地上二〇階建ての分譲マンションの建築を予定し、その建築確認を受けており、右建物が建設されれば、本件土地の日照がその程度の如何はともかく阻害される結果となるおそれがあることが認められるが、前記三1のとおり、本件土地は家屋の連たん度が低い状況類似地区に属するものであって、専用住宅が相当連たんしているときに比較して日照阻害が価格に及ぼす影響は少ないと考えられる上、本件土地に対する日照阻害が原告主張のとおりであるとしても、終始影地になるのは四分の一強であるにすぎず、しかも、本件時点ではいまだ現実化していないのであるから、日照阻害の点が価格へ大きく影響し、評価の結果が著しい不均衡を来すものとはいえず、これを考慮しなかったからといって不合理とはいえない。

よって、日照阻害を考慮しなかった点は、違法ではない。

六相続税評価との関係について

固定資産税と相続税とはその趣旨が異なり、地方税法と相続税法という別個の法律によってそれぞれ独立して評価方法が定められ、別個の評価権者がそれぞれの評価方法に基づいて評価するものであるから、本件土地につき、相続税法による評価に際しては倍率方式が採用されているからといって、そのことが本件における評価庁の裁量権の範囲に影響を及ぼすものと考えられず、この点に関する原告の主張は採用することができない。

七結論

以上に認定、説示したところによれば、本件登録価格の決定には原告の主張するような違法はなく、本件決定は適法である。

(裁判長裁判官瀬戸正義 裁判官後藤博 裁判官入江猛)

別紙物件目録<省略>

別紙図面<省略>

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